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成田のホテルにて

 緑の田畑とアンバランスな高速道路を20分位走ると『ホリディー・イン・東武成田ホテル』へ到着した。日頃安いビジネスホテルしか泊まらない者にとって、このようなホテルは勝手が違う感じだった。ロビー左にはピアノの演奏中で華やいだ雰囲気だった。「なかなかいい演奏ですね」と言いながら所定のサインやカード支払い等の確認を行い、チェックインは終わった。

 ホテルマンの案内で 516号室へ入った。 しばらくするとノックと同時に女性の声が聞こえた。えっと思いながら聞くと事前に預けておいたサムソナイトを届けてくれたのだった。ナ〜んだと言いながらもドアを空けると、なかなか可愛い人だったので、ひときわ高い声で「どうもありがとう!」と返事した。

 入浴して、さっぱりしたのはいいが体が暖まった分、また、睡魔が近ずいてきた。浴衣掛けでぼんやり見ていたテレビを消すと知らぬ間に毛布をかぶっていた。20時前に通訳の小林さんより電話があり、「今日はそちらに行けない、明日エールフランスは満席なので一足先に日航で行き、シャルル・ド・ゴール空港で待っている、打ち合わせはジュネーブでやろう、上野君はパリに着くまではツアーコンダクターをやってくれ」と言うことだった。

 出発時点から外国旅行慣れした小林さんがいるといないとでは雲泥の差であり、少し不安を感じたが自社便が満席なら仕方がないと思った。パリからジュネーブへの乗り継ぎははじめてだが到着ロビーに小林さんが迎えに来てもらえたら、大丈夫だろう。成田からの出発だけなら 7年前と大きく変わることもないだろうと考えた。

 かなり寝たので今度はお腹がすいてきた。部屋から出て、ホテル内のレストランのメニューをのぞくとかなり高い。まわりに居酒屋でもないだろうかと思い外に出た。店の灯かりを頼りにしばらく歩いたが、自動販売機以外に行き当たらなかった。結局、ホテルと道路をはさんだ反対側の「ファミリーマート」で夕食の買い出しをすることにした。イカの刺身、焼き鳥、フランクフルトソーセージ、サラダ、弁当、お菓子、洗面セットに酒まで置いてあり、大抵の物は揃うようだった。

 最初からここにくれば良かったかな〜と思いながらも物色していると、私がいつも仕事中着ているのと同じようなつなぎの作業服姿の成田空港従業員が夜食用に弁当を買っていた。また、褐色の外国人労働者と思われる人も数人で話していた。風の便りに成田は外国人労働者が多いと聞いてはいたが、実際に見るのは始めてであった。

 遅い夕食をテレビを見ながら食べ終わると、お腹が安心したのか眠気がさしてきた。22時30分ベッドライトからフットライトに切り替えた。(1994年1月1日記す)

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