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聞いた言葉・第164回目、『経済の語源に逆行する政策は破綻への道』

 

経済の語源に逆行する政策は破綻への道

  2012年末の総選挙前後から「インフレ目標、円安、株高」とか、「政府と日銀一体で」とか、中には「アベノミクス」などの 言葉を用いてマスコミなどでは取り上げられ、まるで「これで不況から抜け出せる」などと、はしゃいでいるような報道も見受けられます。 それに対して、当然、逆の見方や評価もあり、一時期景気は良くなっても結果として大企業だけがもうけて、中小企業と国民の生活はひどくなり、さらには国の借金が増えるだけではないかと言う論調もあります。

 先の経済対策は、口に出して言うかいわないかは別としても、(聞いた言葉シリーズ第126回目の)トリクルダウン理論(trickle-down theory)」と呼ばれているものです。この経済理論は、分かりやすく極簡略して言えば、「コップ(大銀行、大企業や大金持ちなど)の中へ、水を注ぐように国から(借金した金で)財政(金融緩和や大規模公共事業のばらまきなど)=お金を満たせば、水(この場合はお金が)コップから滴り(したたり)落ちるように庶民や中小企業へ、お金が行き渡る」との考えです。

 しかし、この経済対策は、過去の何十回と実施され効果の上がらなかった例でも分かる通り大企業は、もうけても内部留保にしたり海外進出用の資金などになっただけで、中小企業や庶民まで金が行きわたりませんでした。そして、膨大な国の借金財政が残っただけでした。

 当然、この数十年間、多くの国民は、ほとんどベースアップも生活向上などもなく、さらに景気自体もヒドクなるばかりでした。このような経済対策は、世界各国でも過去に実施され、その結果は日本と同じで、「トリクルダウン理論」式の施策は、役に立たないと言われています。

 私は、政治も経済も素人ですから学問上からとか研究の成果から分析してから、「日本経済は今後どうなる、こうなる」みたいなことを言っている訳ではありません。また、断定的な予測もしてはいません。しかし、そのような者でも、 還暦過ぎれた年齢上から、これまでの経済ニュース時に良く用いられた「高度経済成長」、「石油危機」、「ドル危機」、「経済バブル」、「平成大不況」、「失われた10年・20年」、 「リーマンショック」などは、実生活と同時進行で見聞きしてきました。

 今日までの長く続く大不況時代とも呼ばれる期間でも、政府による経済対策が実施されていなかった訳ではないのです。その間、ずっと政治経済のかじ取りをしてきていたのは一体誰だったのでしょうか。私から見れば、この長期間同じような政党・政治家や経済学者・専門家みたいな人達が推進して来たのではないでしょうか。

 そして、それらの政治家は、「痛みに耐えてカイカクを!」などと叫び、それをほとんど無批判、礼賛するようにマスコミ各社は報道してきました。しかし、その結果は、失業者の増大、中小企業の倒産、「年金不安」、「医療制度の不安」、「過労死」、「格差社会」、「不安定雇用者の増大」、 「ワーキングプア」、「ネットカフェ難民」、「年間自殺者3万人」などの言葉に代表されるような日本になりました。はたして、これらの事柄は既に死語となって、その現象も終わったとでも言うのでしょうか。私の見た目、なんら大不況の根本原因は、変わっていないと思えます。

 (2013年1月)現在、テレビのニュースや新聞記事で使用されている、何か目新しい用語みたいに思える言葉は、過去から何十回と失敗した経済政策を、ただただ看板だけ描き変えたものです。そして、その中身は、先に書きました通り全てが古色蒼然としたものばかりです。また、これらの対策は、真の根本原因を正すのではなく、一時期のバブルを誘因するようなやり方で、結果、莫大な借金が国には残り、中小企業や国民へは深刻さが深まることになりかねません。

 前書きが大変長くなりましたが、改めて今回の経済の語源に逆行する政策は破綻への道と、なぜ書いているのかを触れていきたいと思います。経済の語源については、既に(聞いた言葉シリーズ第25回目の)経済=経国済民』ページに詳細に書いていますが、簡単に書きますと「経済とは中国の”経国済民”国を経め(おさめ)民を救うのが語源」と言うことです。

 さらに先のリンク先ページに、「病気でも事故でもその原因を正確に把握し、その要因に合った処方箋や対策を確実に実施すれば、体力は回復するし、事故は減少傾向になることは、自明の理と言えます。それが、現在なぜ経済に関しては、できないのか。なぜ、少しでも良くならないのか。 結局のところ、私が思うにこの経済の語源である『経国済民』の精神に立って、日本の経済政策そのものが実施されていないからだと思います。つまり、正しく真っ直ぐ国を治めず、民を救うような経済政策になっていないからでしょう」とも書いています。

 この内容は、2003年4月4日掲載分のページに書いた内容ですが、その時点からも既に10年経っています。この間に経済対策を担当した政党も実施した施策も名称の違いはあれど、似たようなものでした。それらの結果は、当然さらに当時より悪くなって来たのは、ご存じの通りです。総じて言えば、一時しのぎみたいにして一見少しは良くなるような兆しを示しても、先に述べた根本原因への対策がなされていないため、より深刻化してきたとも言えます。

 また、このようなやり方は、(聞いた言葉シリーズ第109回目の)大洪水よ我が亡きあとに来たれ」(「後は野となれ山となれ」と同意語)みたいなものですから既に先の見通しは見えていることと同じでしょう。国内消費の6割以上を担っている一般国民、その多くが働いている中小企業が苦しんでいることを知りながら、そこには対策しない経済政策をいくら用語や看板を変えて実施しても、事態はより深刻化していくように思えます。

私の関係ホームページ
 経済=経国済民
 トリクルダウン理論(trickle-down theory)
 資本主義の暴走、資本主義の暴力
 大洪水よ我が亡きあとに来たれ
 政権交代の期待と裏切り
 日本売り
 演説の希望と失望
 カジノ経済、ギャンブル経済の宿命
 真実を自分で探す時代
 国家管理の資本主義
 全ての人をいつまでもだまし続けることは出来ない
 言葉遊び国会、劣化政治

 度々重複したことを書いてすみませんが、私は先に紹介しました(聞いた言葉シリーズ第25回目)経済=経国済民』ページのまとめに、次の<>内のことも書いています。こんな時だからこそ、『経国済民』の精神に立っての経済政策(運営)が、必ずや好転する兆しを見せる第一歩とも思えます。

 何事も基本や基礎が、結局のところ「急がばまわれ」ではないでしょうか。経済の語源(=経国済民)は、中国の古い言葉だけではなく、現在でも脈々と常に流れ続ける”新しい言葉”のように私は思えます

  私は、この真意は過去に終わったことではなく、現在でも通じる対応策ではないかと考えています。むしろ、このことをしないことが、今回実施されようとしていること含めて経済の語源に逆行する政策は破綻への道へ突き進む元とも思えます。そうは言っても、庶民では”悪い政治の防波堤”は、簡単に築くことはできないのではとも推測しています。

  しかし、「人は明日の天気は変えられないが、明日の政治は変えられる」の言葉もあります。現在用いられているような新語やマスコミ用語みたいなものに惑わされることなく、国民の澄んだ瞳で良く見て、次の権利行使(選挙)へ展望を持つことも大切ではないでしょうか。


(記:2013年1月28日)

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