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聞いた言葉・第50回目、人は生きるだけでも大事業

 
人は生きるだけでも大事業

 私は、この言葉に近いことを年配や諸先輩の方々から多数聞きました。大村弁(長崎弁)で、「人一人で、たった生きていくだけでん、なおんこっちゃなかとバイ」(人は一人でも、ただ生きていくだけでも大変なんだ)と、諭すようにおっしゃっておられる方もいました。(注:掲載写真は、文章と関係ありません)

 人は、親のすねかじりから離れれば、ほとんどの場合、自ら働き収入を得て生活し、その後結婚、さらには子どもを育てることになると思います。このようなことが、現在進行形の人もいれば、まだ手前、あるいは子どもはもう卒業だと言う方も、いらっしゃるかと思います。いずれにしても、誰でも経験し、大は大なりに小は小なりに、苦労や逆に喜びもあり、ずっとここまで、生活してこられたと思います。

 一人でも、社会的には権利や義務もあり一定の収入があれば、所得税を始め各種の税金(社会保険料含む)さらには冠婚葬祭や地域行事、個人的には最低限の衣・食・住に関わる支出、それに交通費、趣味や雑費などと、なんと色々と生きていく上で、お金も労力も必要なのでしょうか。

 「いや、俺は山にいる仙人みたいにして生きる」と言ったとしても、霞を食って人が永らえる訳ではないでしょうし。どちらにしても人は、何らかの形で生きていくためには、本当に努力が必要なんだなあと、つくづく思います。中には、生きると言うことを、「生き抜く」とか、さらには「生きるための闘い」みたいに表現をされる方もいます。

 また、なかには「自分は生きていると言うより、自然の中で生かされている」と思っていると言われた方の話しも聞きました。(詳細は、私の「聞いた言葉シリーズ第37回目、『自然の中で生かされている』」をご参照願います) さらには、中学生の時だったと思いますが、先生が何のことでこんなことを授業中に言われたのか忘れましたが、「人間はねえ、生まれてきただけでもスゴイことなんだ」とも聞きました。

 失敗や人に迷惑ばかりかけている私には、皆様のいずれの意見にも平身低頭返すことばもありません。ただ、今の社会は、生きている、あるいは真面目に働いているだけでは評価しないみたいなことも、これまた多くあるようです。結果、実績が総てであり、経過や努力だけでは認めないみたいな風潮もあるかと思います。

 もちろん、素晴らしい仕事をして評価される方とか、常に人の上に立ってリーダーみたいな存在、自らの才能を発揮され国内的にも世界的にも名声を上げられる方、さらには中には多くの富や財産を築かれる方もいらっしゃるかとも思います。一方、世間的にはあまり目立たないような仕事や家族のために、例えば介護みたいなことを黙々とされている方もおられると思います。

 私は、いずれの方も並大抵のことではできないことと思っています。とりわけ、日常不断の繰り返しを、至極当然のごとく、こともなげにおこなっている方の努力は、名声とか富とかと対極になるかもしれませんが、これこそが何物にも変えられないものとも思っています。

 仕事などで、たまたま思うような成果や努力の結果が見えない、あるいは他人から評価されなくても、そのようなことは、もしかしたら一時期のことかもしれません。人の一生、日常何でもないような暮らし方をしているようでも、それはそれは、大変な努力と事業の上に成り立っているように思えます。やはり、人は生きていくだけでも、すごくて大変なことをしているのだと。(記:2005年2月1日)

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